例えば、僕にとっては、ご飯にとってのお味噌汁は、お味噌汁である。
これは何人たりとも覆すことのできない不変の原則である。
じゃあ、ハンバーガーにとってのお味噌汁は?
そう。コーラだ。
アイスコーヒーとかオレンジジュースとかいろいろあるけど、ハンバーガーにとってのお味噌汁は、やっぱりコーラだ。
この時、お味噌汁はお味噌汁ではなくなる。RIGHT?
じゃあ、羊羹にとってのお味噌汁は?
そう聞かれたら僕はこう答える。
緑茶。
そ、羊羹にとってのお味噌汁は緑茶。
羊羹にとってのお味噌汁はお味噌汁じゃないんだ。不思議だね。
じゃあ透明度の高い色白で思春期真っ盛りの美少女にとってのお味噌汁は?
違う違う。アンバサじゃない。ちょっと惜しい。
ポカリスエット以外ありえない。
後藤理沙とか綾瀬はるかとか川口春奈とかそのあたり。
彼女たちにとってのお味噌汁はポカリスエットであって、お味噌汁じゃない。
だんだん難しくなってきたね。
じゃあさ、雪の降る季節、決して溶けることのない熱いラブロマンスがほしい、という気持ちにとってのお味噌汁は?
ごめんごめん。簡単すぎたね。そ、広瀬香美。
雪の降る季節、決して溶けることのないラブロマンスがほしい、という気持ちにとってのお味噌汁は広瀬香美が一番美味しいんだ。
赤と青、どちらを切るかわからない時限爆弾にとってのお味噌汁は……わかってきたみたいだね。
そ、どうして赤を切ったか聞かれて、「朝見た占いのラッキーカラーさ」とかいう命の重さに対する判断とは到底思えない理由をすかした感じで話す名探偵役だね。
あいつ、マジでなんなんだろうね。でも、完全にお味噌汁だよね。
スーパーハッカーにとってのお味噌汁はなんだろうね。
なになに? 「ち、ファイヤーウォールしこんでやがる!」 ていう意味不明な独り言を叫び始める?
うん。惜しい。でもね正解は、コマンドプロンプト多窓で手打ち操作。
あれ、なんでなんだろうね。スーパーハッカーなのにね。
そうなんだ。
お味噌汁って大事なんだ。
お味噌汁は主役になれないけれど、お味噌汁がないと世の中のすべての物事の解像度がぐんと下がってしまうんだ。
ご飯にみそ汁がなかったら? ハンバーガーにコーラがなかったら?
透明感のある真夏の美少女にポカリスエットがなかったら?
スーパーハッカーにコマンドプロンプトがなかったら?
それはもう世界が崩壊している。
でもね、そんなお味噌汁も、残念ながら相思相愛の関係ではないことも知っておきたい。
ポカリスエットに対するお味噌汁は残念ながら綾瀬はるかじゃない。
高校球児。いやいやサッカー部じゃない。あいつらはどうせエナジードリンクとか飲んでる。
要するに綾瀬はるか→ポカリスエット→高校球児とつながっている。
高校球児は間接的にではあるが綾瀬はるかとお味噌汁をしていることになる。
これはすごい発見だ。
お味噌汁ってすごい! お味噌汁って夢がある!
でも広瀬香美と冬のロマンスは相思相愛なんじゃ? そう思うよね。
でも違うんだ。広瀬香美にとってのお味噌汁は「毎年雪が降るたびに召喚される宿命」。
これ、岡本真夜にはない広瀬香美独自のお味噌汁だよね。
そうなってくると、僕にとってのお味噌汁って何だろう。
僕にだってお味噌汁はきっとあるはずさ。
――17時を過ぎたオフィス。せわしなくカタカタとキーボードを打つ音を聞こえないふりをして、ただずっと壁にかかっている時計だけを見つめている。
早く18時になれ。早く18時になれ。そんな祈りを胸に込めて。
僕にとってのお味噌汁?
多分、窓際かくだらん妄想だろう。
でもそのくだらん妄想のおかげで、この世界にはお味噌汁を介した微小な希望が隠されていることを今日知った。
僕が飲むこのお味噌汁は、この世界のどこかにいるであろう綾瀬はるかのお味噌汁に繋がっている。
そして綾瀬はるかのお味噌汁はまた誰かのお味噌汁に繋がっている。
皆が皆お味噌汁でつながっている。
LOVE & PEACE。
この世界は、きっと、そうなんだ。
俺は綾瀬はるかになりたい。

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